多汗症の最新治療薬まとめ!3つの薬 (開発中)効果・副作用を分かりやすく解説

手や脇の汗、多汗症を克服するための治療薬が現在いくつか開発中です。そのうちの3つに関してその最新情報や発汗への作用を解説します。

抗コリン剤の局所投与が可能に!

今回紹介する「DRM04」、「Oxybutynin」、「BBI-4000」の3つは、いずれも今現在開発途中であり、まだ実用化はされていませんが、今後の普及が期待されている革新的な最新薬です。

これらの製品の革新的な所は、抗コリン薬(汗を抑える効果を持つ薬、プロバンサインが有名)の効果を局所投与で実現できるようにした点にあります。局所投与とは、皮膚に塗布する塗り薬や注射、目薬などが該当する、患部に直接作用させることができる薬の投与方法のことを指します。

プロバンサインをはじめとする従来の抗コリン薬は、経口投与で服用(口から飲み込んで摂取)するのが一般的であり、それだと全身にその薬理効果が行き渡り、ピンポイントに効かせる事ができません。

特に手汗やワキ汗のような局所的な発汗には、局所投与の方が断然効果的であるため、実用化が望まれる製品となっています。

抗コリン薬の効果について

「抗コリン薬」はアセチルコリンという神経伝達物質の働きを阻害することで発汗を抑制する薬。多汗症の治療にも処方されることがあり、中でも多汗症治療のための抗コリン薬として現状唯一保険が適用されるプロバンサインが有名です。

アセチルコリンと発汗の関係

外から強いストレスを受けると、自立神経の一つの交感神経の働きが活発になり、その神経末端からアセチルコリンが分泌されます。そして、このアセチルコリンが汗腺にあるアセチルコリン受容体と結合することで、汗が分泌されます。

つまり、アセチルコリンによる伝達が上手くいかなければ発汗が抑制されます。これが抗コリン薬の発汗抑制作用です。

手汗は精神性発汗と呼ばれるものであり、緊張や不安といった心的ストレスを受ける事で発汗が促されます。これもアセチルコリンによるものです。

多汗症の最新治療薬1. DRM04

Dermira社が開発中の抗コリン外用薬!

Dermira社は、アメリカのカリフォルニア州に本拠地を置く、主に多汗症やアトピーといった皮ふの悩みを解決する薬を開発に携わっている製薬会社です。

このDermira社が今現在開発に力を入れているのが「DRMO4」です。DRMO4は開発中の呼び名・コード名であり、今は「グリコピロニウム トシレート」という名がついているようです。

DRMO4は2017年11月にFDA(アメリカ食品医薬品局)から新薬としての認可が下りたとのことなので、もうすぐ市場に出回るようになるかもしれません。

マルホ株式会社が日本で独占販売契約済み

マルホ株式会社は、大阪に本社を置く、医療用医薬品の製造・開発から販売までを行っている企業で、先ほど紹介したDemira社と提携を結んでおり、日本でのDRM04の開発・販売権を独占しています。

つまり、日本で発売されるDRM04はすべてマルホ株式会社で製造・販売されたものになります。

グリコピロニウムの効果

DRM04の有効成分は「グリコピロニウム」と呼ばれる化学物質。グリコピロニウムには、コリン作動性(アセチルコリン)受容体の一つである「ムスカリン受容体」の働きを阻害する作用があり、これにより喘息や多汗症を緩和します。

グリコピロニウムはいわゆる抗コリン薬のひとつであり、副作用には、心房細動(不整脈の一つ)、のどの渇き、便秘、下痢といったものがあります。

多汗症の最新治療薬2. Oxybutynin(オキシブチニン)

イスラエルの研究チームが制汗効果を実証!

イスラエルのテルアビブ大学(Tel Aviv University)の研究チームは、「オキシブチニン」という化学物質の制汗効果を検証するために、臨床実験を行い、多汗症治療に有効であったという報告をしています。

オキシブチニンには抗コリン作用があり、その制汗効果は以前からよく知られていました。しかし、今回の研究では、「オキシブチニンの肌への塗布でも汗を止める事は可能である」という報告をしており、それがとても革新的な結果であると思います。

<Topical Oxybutynin 10% Gel for the Treatment of Primary Focal Hyperhidrosis: A Randomized Double-blind Placebo-controlled Split Area Study, http://www.medicaljournals.se/acta/content/abstract/10.2340/00015555-2731>

どんな臨床実験を行ったの?

この臨床実験では、61人の被験者に対し、腋窩、手掌、足底の3ヶ所に、「オキシブチニン」を10%配合したジェルを30日間塗布し続け、その効果を検証しています。

被験者にオキシブチニンする際には、二重盲検法というプラシーボ効果を排除する方法を用いています。また、塗布部の片側には、オキシブチニンを、もう片側にはプラシーボ(偽薬)を塗布し、対照実験が行えるような工夫がされています。

*プラシーボ効果:思い込みによって生じる薬理効果のこと。主観的な結果だけではなく、客観的効果にも影響を及ぼす恐れがあり、臨床実験を行う際には決して無視できない効果です。

72%の人に制汗効果を確認!

被験者61人中、4週間の治療を最後まで受けたのが53人であり、その内の42人(72%)に対して制汗効果が認められました。

この実験では、以下の3つの方法で制汗効果の有無を確認しています。

・HDSSスコアの変化(多汗症の重症度を確認するためにいくつかの質問を行う)
・DLQIスコアの変化(アンケートに答えて生活の質の変化を評価する)
・ヨウ素でんぷん反応を用いた評価(ヨウ素の発色によって多汗症を定性的に診断)

上2つの評価法は、患者自身の主観によるものである一方、ヨウ素でんぷん反応の方は、客観的に多汗症の度合いを測定できます。

オキシブチニンってどんな成分?

抗コリン薬「ポラキス」に含まれる化学物質

ポラキスとは、オキシブチニンを成分とする内服薬の商品名。日本皮膚科学会が発表している多汗症ガイドライン中でも、「多汗症改善に有効というエビデンスがある」と言及されている内服薬です。

オキシブチニンは抗コリン薬という薬に属し、その制汗効果は広く知られていますが、今現在はまだ保険適用外となっています。

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