運動により汗の臭いに変化が起こるという意見があります。
例えば、五味クリニックの院長・五味常明先生は、有酸素運動を行うと臭いの少ない良い汗をかく事が出来、逆に無酸素運動を行うと汗の臭いをきつくすると述べています。
また、エクリン腺からの汗は運動により臭いが緩和されるが、アポクリン腺からの汗は運動で臭いがきつくなるとも語っています。
無酸素運動とは、瞬発的に大きな力を出す運動のこと。例えば、筋トレや短距離走などは無酸素運動に分類されます。
無酸素運動では、解糖系と呼ばれる代謝経路を用いて体を動かすエネルギーが産生されます。解糖系の反応では酸素は用いません。そのため、解糖系を用いる運動は無酸素運動という名で呼ばれています。
有酸素運動とは、軽めの負荷を長時間与え続ける運動のこと。ジョギングや水泳などが有酸素運動に分類されます。
有酸素運動では、クエン酸回路を用いてエネルギーが作られます。クエン酸回路では酸素が必要です。そのため、ジョギングやマラソン等の運動は有酸素運動と呼ばれています。
運動と汗の関係を解説する前に、わきがの原因について解説します。
汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の二つがあります。エクリン腺は、体全体に分布しており、アポクリン腺はワキや肛門周りなど体の一部分に分布しています。
アポクリン腺から分泌される汗には皮脂やたんぱく質などの不純物を多く含むという特徴があります。これらの不純物は皮膚表面に存在する細菌の大好物。皮脂などは細菌の手によって分解され、その時に分解臭と呼ばれる臭いを発生させます。
これが、わきがの臭いの原因となります。
上述のとおり、無酸素運動では解糖系を用いてエネルギーが作られます。解糖系では乳酸が生成され、これによりアンモニアが発生が促されます。アンモニアは臭いの原因物質であり、これが汗腺から分泌される事で体臭がきつくなります。
これはわきの臭いに限った話ではありません。しかし、体全体の臭いが強くなるので、結果的にワキの臭いもきつくなります。
有酸素運動では、クエン酸回路を用いてエネルギーが産生されるため、乳酸が生成されず、臭いの原因であるアンモニアの分泌が抑えられます。
また、有酸素運動は遊離脂肪酸の血中濃度を下げる事が出来ます。遊離脂肪酸は加齢臭などの原因物質を作る原料となるため、この濃度を減少させることは、体臭の抑える事に繋がります。
ただし、遊離脂肪酸の分解には20分以上の運動の継続が必須。つまり、臭いを改善するには最低20分以上のウォーキングやジョギングが必要です。
習慣的に運動を行い汗をかいている人は、汗腺の再吸収が効率的に行えるようになります。
汗は血液の成分の一つである血漿と呼ばれる液体から作られます。汗腺では、血液からこの血漿を汲み取ります。そして、汗として分泌するまでの道のりで再度血漿中のミネラルなどを吸収します。これを汗腺の再吸収と呼びます。
汗腺の再吸収が効率的に行われると、アンモニアなどの臭い成分や不純物の少ないサラサラとした汗が出ます。サラサラの汗は、臭い成分や細菌の餌となる不純物が少ないため、臭いが少ないです。
また、再吸収では汗中に含まれるアルカリ成分も吸収され、肌表面を細菌が苦手な酸性状態をキープ出来ます。これにより細菌の増殖が抑えられ、臭いが減少します。
夜更かしなどで生活リズムが乱れたり、栄養バランスが偏った食事を行うと臭いが強くなる場合があります。また、ストレスなどの心的要因も体臭を強くする原因になり得ます。
わきがの臭いを抑えたい方は、自身の生活習慣も見直してみましょう。
また、運動にはストレスを発散する効果や快適な眠りをもたらす効果があり、不摂生が原因の臭いの改善にも有効です。
運動すれば必ずわきがが改善される訳ではありません。
そもそもわきがは体質であり、大部分は親からの遺伝によるもの。運動で体質まで変化する事はないので、体を動かすようにしたからといってわきがが治るという事はありません。
ただし、生活習慣やストレスが原因で体臭が強くなっている場合は、運動によりわきがの臭いが緩和する事もあるでしょう。
運動とわきがの関係について紹介しました。運動をすればワキガが治るという事はありません。ただし、ストレスなどの後天的な原因で臭いが強くなっているのであれば、有酸素運動によりある程度臭いが改善される事もあるでしょう。
本記事がわきがでお悩みの方の参考になれば幸いです。
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