汗は皮膚表面の汗腺と呼ばれる部分から分泌されます。この汗腺は体の至る所に存在しているのですが、すべての汗腺の性質が全く同一のものであるのかと問われればそうではありません。
この汗腺はその性質から、以下の2つに分類することが出来ます。
・エクリン腺
・アポクリン腺
この両者では、存在する場所、分泌する汗の成分に大きな違いが存在し、その役目も異なっています。
結論から言うと、手汗はエクリン腺から分泌されています。そのため、手汗はサラサラしていて比較的臭いも少ないというエクリン腺から分泌される汗の特徴を持ちます。
エクリン腺からの汗はほとんど「温熱性発汗」ですが、手汗はエクリン腺からの発汗にも関わらず、例外的に心的要因から引き起こされる「精神性発汗」と呼ばれるグループに属しています。
あなたも思い返してみれば緊張や不安が喚起されるような場面ほど手汗がひどくなっているはずです。例えば大事な面接のときや初デートの時など…etc
エクリン腺は唇など一部を除く体のあらゆる部分に分布しています。その分布密度は1㎝四方の領域に130~600個ほどあり、個人差はあるものの、体全体で約300万個もの数が存在しているといわれています。
エクリン腺の大きさはアポクリン腺に比べて小さく、別名「小汗腺」といった呼び方もされます。また、エクリン腺は毛根と独立して開口しているという特徴があります。
エクリン腺から汗を分泌する際には腺細胞が一部ちぎれたりということはなく、その汗の成分はほとんど水であり、無色透明で塩分を多く含みます(漏出分泌)。
汗臭さの原因は、雑菌が汗の中にある皮脂などの不純物を分解するときに生じる分解臭にあるのですが、エクリン腺由来の汗の場合、水以外の不純物が少ないので臭いもそれほどきつくはありません。
エクリン腺から分泌される汗は、ほとんどの場合、体温調節機能として働きます。ただし、先ほど紹介した手汗や、足の裏の場合は精神性発汗という機構により分泌が促されます。その他に味覚性発汗という機構でも分泌されます。
体温調節を行うために、エクリン腺からは一日におおよそ700~900mlもの汗が分泌され、その発汗量は交感神経とアセチルコリンによりコントロールされています。
アポクリン腺は、脇の下、乳首、下腹部などのごく限られた部分にのみ存在する汗腺です。エクリン腺に比べてその汗腺の直径が大きいので「大汗腺」とった呼ばれ方もします。
また、エクリン腺とは異なり、毛根の開口部に存在しています。つまり、一般的にはワキなど毛量の多いところに分布している事が大半です。
アポクリン腺から分泌される汗では、汗腺細胞の細胞質の一部がちぎれて一緒に分泌される(離出分泌)ので、その成分に多くのタンパク質を含み、白濁しています。
アポクリン腺の汗の臭いは、エクリン腺のものよりも強いです。その原因は、離出分泌により汗中の不純物が多くなり、その分細菌による分解臭が強くなるからだと説明できます。
ワキ汗は強い臭いを発しますが、あれがまさしくアポクリン腺から分泌される汗の分解臭です。
このような強い臭いを発する理由として、アポクリン腺由来の汗には本来フェロモンとして異性を惹きつける役割があったからだといわれています。つまり、アポクリン腺は哺乳類に存在する芳香腺(発情期に異性を惹きつけるフェロモンを分泌する機関)が退化したものであるといえます。
なので、アポクリン腺からの発汗は、体温が上昇したときではなく、精神的な要因により引き起こされます。また、出生時にはアポクリン腺は機能していないが、思春期を迎えると発達することもその説を支持する根拠になります。
さらに、エクリン腺とは異なり、アドレナリンによって発汗が促されるといわれています。
汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、その役目が全く異なるという事がわかったと思います。
手汗はエクリン腺からの発汗にも関わらず精神性発汗という機構により分泌が促されるちょっと特殊な汗です。
しかし、手汗で緊急時の手の滑りを防ぐために発汗するようになったという仮説が正しいのであれば、わざわざ臭いを発するアポクリン腺から分泌させる必要もないので、手汗がエクリン腺から分泌されるという事実もそこまで不思議なことではないように感じます。
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