大阪国際大学の井上芳光教授が行った実験のデータによると、0~10歳くらいまでは発汗量はほぼ一定で男女差は小さく、思春期を境に男女共に発汗量が増加し、男性の方が女性よりも発汗量が多くなります。
このデータだけを見ると、確かに男性の方が汗が多いという結論になります。
先ほど紹介したデータから「平均して男性の方が汗が多い」という事は分かりますが、「男だから女性よりも汗が多い」とは断言できません。
なぜなら、男女の体格差、生活環境の違いなどを考慮していないからです。例えば、一般に男性の方が体が大きい傾向があるので、体格に比例して発汗量が増えるのであれば、先ほどの発汗量の差は性別、体格差のどちらに原因があるのか判別不能です。
ということで、実は発汗量の性差については意見が分かれるところです。そこで、今回は、
・女性ホルモンと汗の関係
・体格、体重と汗の関係
・運動と汗の関係
について解説し、性別と発汗量の関係について考察してみました。
埼玉医科大学准教授の中里良彦氏によると、女性ホルモンと発汗量には相関があり、女性ホルモンの増加に伴って汗の分泌量が抑えられるとの事です。
実際に、女性ホルモンが減少する出産直後の女性は、多汗になることがあり、これも女性ホルモンと汗の量の関係性を示唆しています。
冒頭で紹介したように、女性ホルモンの分泌が活発になる思春期を境として男女の発汗量の差は顕著になります。また、50代を境として男女ともに発汗量は減少し、男女間の発汗量の差も減少していきます。
男女共に加齢により汗の量は減りますが、これは汗腺機能の衰えによるものであり、ここでは重要ではありません。着目して欲しいのは男女間の発汗量の「差の変化」です。
50代はちょうど女性が閉経を迎える年代であり、これを期に女性ホルモンの分泌量は減少していきます。つまり、女性ホルモンの量の変化と男女間の発汗量の差には負の相関関係(反比例)が成り立つ事が分かります。
以上の結果より、女性ホルモン分泌量が多い女性の方が汗の量が少ないと言えるでしょう。
2017年2月23日、生理学雑誌「Experimental Physiology」に掲載された、オーストラリアにあるWollongong大学のSean Notley氏が中心となって行われた研究では、男女間の発汗量の差は性別の違いによるものではなく、体格の違いによるものであると結論づけています。
人体の熱放散機能(体温を維持するための機能)には、
・汗の気化熱を利用した冷却
・血液循環による熱放散
の2つがあります。従来の考えでは、女性は男性に比べて血液循環による熱放散に大きく依存しているために、男性よりも発汗量が少ないと考えられていました。
Notley氏の行った実験結果によると、小柄な人ほど血液循環量と体温減少が強く関係し、発汗量と体温減少の関係は小さくなります。また、この傾向は男女どちらにも見られます。
つまり、小柄な人は体温調節の際、血流循環による熱放射の寄与が大きく、発汗量が少なくなるという傾向があるという事になります。女性だから男性より汗が少ないのではなく、女性は男性に比べて小柄な人が多いので、汗が少ない傾向にあるというのがこの研究の結論になります。
大阪国際大学と神戸大学が共同に行った研究において、運動による発汗量は男性の方が女性よりも多く、また、女性が発汗するためには男性よりも高い体温になる必要がある事が示されました。
この結果より女性の方が汗をかきにくにという事が言えそうですが、体格が小さい人ほど発汗する体温が高いという可能性も否定できません。
一般に男性の方がスポーツやジムなどで習慣的に運動している人が多いと思います。習慣的に運動し汗をかいている人は、汗腺の発汗機能が高まっており、汗をかきやすい体質になる事が分かっています。これを温熱順化といいます。
性別というよりも生活習慣の差ではありますが、これも男性の方が発汗量が多い傾向にある原因の一つと考えられます。
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