アルミニウム(化学式 Al)は、地球上の地表での存在比(いわゆるクラーク数)が最も大きい、最もありふれた金属です。
この塩化アルミニウムと塩素、もしくは塩化水素を反応させることで得られるのが塩化アルミニウム(化学式 AlCl3 )です。
ちなみに、塩化アルミニウムは英語でAluminium chlorideと呼ばれ、日本語でも直訳でアルミニウムクロライドと表記されることがあります。
この塩化アルミニウムや、ミョウバン(カリウムミョウバン)、クロルヒドロキシアルミニウム(高塩基性塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム)はアルミニウム塩と呼ばれる物質です。
アルミニウム塩(もしくはその中のアルミニウムイオン)は制汗作用があることが知られており、みなさんが普段から使用しているデオドラントスプレーや当サイトで紹介している制汗剤にも、上記の成分のいずれかが用いられています。
塩化アルミニウムをはじめとするアルミニウム塩は、以下の2つの作用により発汗を止める・抑えるといわれています。
・収れん作用により、毛穴や汗管といった皮膚表面にある孔を縮める・閉じる
・皮膚表面のタンパク質と反応してゲル状の物質となり、皮膚表面を覆う、もしくは体孔へ蓋をする
さらに、塩化アルミニウムは殺菌効果により、臭い対策としても働きます。
多汗症を治療するために病院に行くと、塩化アルミニウム水を処方されることがあります。
病院で処方される処方薬は、市販で購入できる塩化アルミニウム配合の制汗剤より高濃度の塩化アルミニウムを含んでいます。例えば、市販制汗剤のオドレミンは濃度13%、一方病院の処方薬は20%程度のものが多いようです。
塩化アルミニウムの濃度が濃いほど制汗効果は高くなるので、病院でもらうものの方が強力ですが、その分肌へのダメージも大きくなります。
肌の表面で働きを見せる塩化アルミニウムは、同時に肌へ刺激を与えます。
この刺激により人によっては炎症を起こしたり、お肌が乾燥気味になったりすることがあるようです。
また、塩化アルミニウムに対して、一部の人は金属アレルギー反応を見せることがあるということも知られています。
とはいえ、これらの副作用も使用を中断すればすぐに治まります。また、この皮膚への刺激が重大な副作用とはならないことが多いため、制汗剤として用いているともいえます。
お医者さんの判断によっては、皮膚が軽度に荒れてしまう場合は、炎症を抑える外用薬(塗るタイプの薬)と併用することもあるとのこと。
ポイント1:傷がないか確認する
傷口に制汗剤が付着するとかぶれの原因となりますので事前に傷がないかしっかり確認しておきましょう。
また、カミソリなどで脱毛した後は眼に見えない細かな傷なのがあるので、数日間おいてから塗りましょう。
ポイント2:パッチテストを行う
制汗剤を使うと肌の調子が悪い、という方は一度パッチテストでお肌と塩化アルミニウムの相性を計りましょう。
パッチテストを行うときには、コットンなどに制汗剤を染み込ませて少量肌に塗布するようにしましょう。肌に違和感を感じたり、かぶれたりしたらその制汗剤を使用するのは控えます。皮膚科へ相談してもいいでしょう。
肌が荒れる以外の副作用もあるのでしょうか?ここでは質問の多い3つの副作用について解説します!
身体の一部の発汗を止めると、ほかの部位(背中や腰回りなど)からの発汗が多くなる現象が起こることがあります。これを代償性発汗と呼んでいます。
一般的に、代償性発汗はETS手術という施術の副作用として知られています。制汗剤の使用によって起きる副作用ではありません。
塩化アルミニウム配合の制汗剤を使用する際に心配する必要はないでしょう。
かつてアルツハイマー病の原因がアルミニウムではないか、という仮説が立てられたことがありましたが、それは仮想のままとなったようです。
そもそもアルミニウムは私たちが日常摂りこむ食材などにも含まれています。この量は人体に悪影響を与えるほどではありません。また、その多くは身体機能により体外に排出されます。
塩化アルミニウム配合の制汗剤に関しては、そもそも皮膚に塗る程度では体内に蓄積されるようなことはないと考えられています。日本皮膚科学会の多汗症治療ガイドラインによると、手のひらに塩化アルミニウムを塗布しても、血液中のアルミニウム濃度への影響はなかった、という報告もあるとのこと。
原発性手掌多汗症に対する二重盲験下での塩化アルミニウム外用剤の有効性の検討, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/123/3/123_281/_article/-char/ja/>
インターネット上で「ワキ汗用制汗剤が乳がんを引き起こす」という噂が広まったことがありました。塩化アルミニウムが体内に取り込まれ蓄積すると乳がんを引き起こすリスクが高まるという説です。
この説は、因果関係を支持されておらず、制汗剤の使用で乳がんが引き起こされることはないと考えてよさそうです。
こ噂を検証した論文のひとつ、「 Antiperspirant Use and the Risk of Breast Cancer
」(2002年)によると、制汗剤・デオドラント剤の使用(単に制汗剤を使用した場合だけではなく、剃毛、脱毛後の制汗剤の使用についても検証している)と乳がん発症リスクに有意な因果関係は得られなかったと報告しています。
また、さきほど紹介した日本皮膚科学会のガイドラインにも乳がんに関して特に言及されていません。
Antiperspirant Use and the Risk of Breast Cancer, <https://academic.oup.com/jnci/article/94/20/1578/1802711>
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